富山県がん対策推進条例(素案)の概要

自由民主党富山県議会議員会では、来る11月定例会において、『がん対策推進条例(仮称)』 の制定を目指しており、このたび、その素案を取りまとめました。

1.なぜいまがん対策か

~ がんの克服は、県民の生活と関わりの深い重要なテーマ ~

1.増え続けるがん死亡

  • 県内で年間 8,000 人ががんに罹患、2人に1人が生涯にがんを経験
  • 年間 3,500 人ががんで死亡(死因の第1位)、高齢化で今後さらに増加

2.変わるがん医療

  • 科学技術の進展等により、がん医療は急速に高度化・専門化
  • がんの治療とあわせ、身体的・精神的な痛みを和らげる「緩和ケア」を行う医療へ

3.がんとともに社会の中で暮らす者が増加

  • がんの治療を終えて復帰された方が、顕著に増加
    (5年生存率 約 60%、がん患者の約3人に1人が 65 歳未満の「働く世代」の者)
  • 外来治療(放射線・抗がん剤等)が普及し、がん患者の半数以上が通院によって治療

2.この条例の特徴

~ 議員提案であることのメリットを最大限に活かした条例 ~

  1. 県民の視点に立ち、患者・家族や医療等の現場の声を取り入れた条例
    (在宅医療・介護サービスの提供、相談支援体制の整備、認定看護師等の育成など)
  2. 新たな課題に積極的に取り組む条例
    (がん患者の就労、がんの教育、がんのリハビリ・口腔ケア、ピアサポート、小児がんなど)
  3. 施策を着実に推進するための条例
    (諮問機関の設置、県民意見の反映、施策の進捗状況の評価・公表など)

3.がん対策の基本理念

  1. がん患者・家族を含めた県民の視点に立って施策を講ずること。
  2. 新たな知見・医療技術の向上、がん患者・家族の置かれている社会的状況の変化、国のがん対策計画の見直しなど、がん医療に関する状況の変化に的確に対処すること。
  3. 県民のがんの予防と早期発見に向けた自発的な取組を促進し、良質かつ適切ながん医療を提供すること等により、がんによる死亡者を減少させることを旨とすること。
  4. 緩和ケアを含むがん医療・介護サービスの提供と社会の支援により、がん患者が生涯にわたって自分らしく豊かな人生を送ることができるようになることを目指すこと。
  5. がんに罹患した者が、治療を受けながら、又は治療を終えて就労等の社会経済活動に参加することを促進すること。

4.条例により進める施策

1.がんを減らし、がんにならないために。

<がん予防の推進>

現状
たばこ対策を推進 がんの発症を予防

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条例により進める施策
がんの罹患が増加 ○学校・保護者・医師等が連携して未成年者の喫煙を防止
○保護者は、未成年者に受動喫煙させないよう努める。
○子ども・妊婦が利用する施設等の禁煙を推進
○事業者は、職場における受動喫煙の防止に努める。
○感染に起因するがん(肝がん、子宮頸がん等)を予防
○食生活を改善

2.がんを早期に見つけるために。

<がん検診の推進>

現状
がん検診の受診者数 が伸び悩み

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条例により進める施策
「働く世代」を含む 県民の受診を促進 がん検診の精度を 向上 ○市町村・医療保険者・事業者が連携して職域を含めた 未受診者対策を推進
○事業者は、従業員が医療保険者・市町村のがん検診を 受診しやすい就業環境づくりに努める。
○精密検査の受診を促進
○がん検診の精度管理・事業評価を実施(早期のがんの 発見を増やし、不必要な精密検査を減らす。)

3.がんを治すために。

<医療従事者の育成、がん診療体制の整備>

現状
専門的ながん医療の充実・医療水準の向上が課題

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条例により進める施策
がんの専門医・認定看護師等の配置を充実
がんの状態に応じた質の高い医療を提供
○手術療法、放射線療法、化学療法、緩和ケア等に関する専門性の高い知識・技能を有する医療従事者(がん専門医、認定看護師等)を育成
○がん診療連携拠点病院の診療機能を充実
○診療機能に応じた医療連携体制を整備
○がん患者のリハビリテーション、口腔ケアを推進 (副作用・合併症を予防・軽減)
○診断、治療、予後の状況の継続的な把握・評価により、医療水準を向上(院内がん登録)
○小児がん患者にがんの状態、治癒後の経過に応じた医療を提供、教育環境を確保

4.住み慣れた場所で、家族と一緒に自分らしい生活を送るために。

<在宅医療・介護サービスの提供>

現状
病状が進んだ場合に、自宅での療養がなかなか困難

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条例により進める施策
がんの在宅医療・介護サービスの提供体制を整備 ○在宅医・訪問看護師の確保対策を強化
○診療所、訪問看護事業所、薬局、居宅介護支援事業所、介護サービス事業者等が密接に連携して在宅医療・介護 サービスを提供
○退院時等における病院と診療所等の連携を確保

5.質の高い療養生活を送るために。

<緩和ケアの充実>

現状
がん患者と家族はがんによる様々な苦痛(※)を経験

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条例により進める施策
がん患者と家族の苦痛を和らげる「緩和ケア」を充実 ○医療機関が連携し、診断、治療、在宅医療など様々な 場面で切れ目なく「緩和ケア」を提供
○緩和ケアに関する研修を充実 ○専門的な緩和ケアの質を向上(がん診療連携拠点病院)
○緩和ケア病棟・病床の整備を促進

※体の痛み・倦怠感(身体的苦痛)、不安・抑うつ(精神的苦痛)、家庭・仕事の問題(社会的苦痛)など

6.安心・納得して治療を受けるために。

<相談支援体制の整備、県民に対する情報提供、がん患者会活動の支援・ビアサポートの推進>

現状
がんと診断された患者は様々な不安や悩みに直面
病状・治療、地域のがん医療、患者支援等に関する情報が不足
がん患者・経験者に よる支えが必要

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条例により進める施策
がんに関する相談 支援体制を充実 ○がん診療連携拠点病院と連携して、がんに関する相談に応じ、助言、情報提供、心のケアなど様々な支援を実施
○医療・心理・生活・介護等の多様な相談に応ずる人材の確保、相談員の研修、関係機関との連携等により、相談 支援の内容を充実
がんに関する正確な情報を、患者の視点に立って提供 ○がん診療連携拠点病院の診療に関する情報、療養生活に役立つ情報などを、容易に得られるよう提供(地域のがん情報ホームページの開設、冊子「がん患者必携」の配布等)
○がん診療連携拠点病院は、がん患者が病状・治療等を自主的に学べる環境の整備に努める。
がん患者・経験者による交流と活動を推進 ○がん患者会活動を支援
○がんの経験者が相談に応じる「ビアサポート」を推進

7.がんになっても安心して働き暮らせるために。

<就労の支援>

現状
医療の進歩により、社会の中で暮らすがん患者・経験者が増加

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条例により進める施策
がん患者の就労を促進(治療と仕事の両立、再就職を支援) ○事業者等に対し、がん患者の就労に関する啓発を推進
○事業者は、がん患者と家族が働きながら治療を受け、看護しやすくするよう努める。
○医師は、がん患者が就労するため必要な助言を行う。
○がん患者の円滑な再就職を支援(就労に関する相談、職業能力の開発機会の提供等)

8.子どもの頃から健康と命の大切さを学ぶために。

<がんの教育>

現状
がんに対する正しい知識の普及が課題

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条例により進める施策
子どもの頃からがんの教育を実施 ○学校で、児童・生徒ががんに関する正しい知識を持ち、がん患者に対する正しい認識を培うための教育を行う。

9.実効性のあるがん対策を着実に推進するために。

<地域がん登録、県民の意見の反映>

現状
がんの罹患等の現状把握が不十分
県民の意見を取り 入れる機会の拡充 が必要

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条例により進める施策
がんの現状を踏まえた、より効果的な施策を推進 ○地域がん登録によってがんの罹患等の現状を正確に把握し、がん死亡者の減少に効果的な施策を実施
がん患者を含めた県民の意見を施策に反映 ○「富山県がん対策推進協議会」(知事の諮問機関)を 設置し、がん患者・家族、がん医療従事者が、施策の立案 に参画
○施策の進捗状況を評価し、「富山県がん対策推進協議会」の意見と併せて公表
○県民によるがん対策の活動を推進する県民会議を設置

(参考)条例素案の策定までの活動実績と今後の予定

平成23年9月 自民党議員会に『条例検討プロジェクトチーム』を設置
以後、関係者からの意見聴取、がん診療連携拠点病院等の視察、勉強会を重ねる。

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平成24年
2月28日(火)
『がん対策に関する中間報告』を公表、県民からのご意見を募集(~5月7日まで)

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3月中旬 患者団体、医療関係団体、事業者団体との意見交換会を開催
3月31日(土) 講演会『これからのがん医療を考える』を開催(於:富山国際会議場)
4月中下旬 タウンミーティング『がん対策推進のための懇談会』の開催
 17日(火) 富山会場(富山県民会館 304 号室)
 19日(木) 高岡会場(高岡商工ビル2階大ホール)
 24日(火) 砺波会場(砺波平安閣)
 26日(木) 魚津会場(ホテルグランミラージュ)

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6月13日(水) ご意見等を踏まえ『がん対策の充実に関する提言』を知事に申し入れ

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7月下旬~8月上旬 条例骨子案について、県内各市町村長、関係団体から意見聴取

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9月11日(火) 『がん対策推進条例(仮称)に基づく施策の積極的な推進』について知事に申し入れがん対策推進条例(仮称)素案を公表
条例素案に対するご意見を募集(パブリック・コメント) ※10月10日(水)まで

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11月定例会(予定) 富山県がん対策推進条例(仮称)を議員提案

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