富山県商工業者等によるにぎわいと魅力あるまちづくり推進条例 (仮称)素案について

1 前 文

前文は、富山県の現状と課題、この条例を制定する趣旨と基本的な考え方を明らかにしたものです。

 本県の長い歴史の中で、商工業者は、県民性である勤勉性と粘り強さ、積極進取の精神を発揮し、本県発展の基礎を築いてきた。江戸時代以来続く越中売薬、豊富な水を活かした電源開発等にみられる商工業者の豊かな創造力とたくましい行動力は、本県において銅器、漆器等の伝統産業から医薬品、アルミニウム、プラスチック等の製造業に至る幅広い業種による日本海側随一の産業集積が形成される原動力となった。
 それと同時に、商工業者は、地域における商品、サービスの提供等を通じて地域社会の絆(きずな)を結ぶ役割を担い、県民の豊かな暮らしを支えるとともに、固有の文化や伝統をはぐくみ、にぎわいと魅力にあふれた地域の創造に寄与してきた。
 しかしながら、車社会の到来、急速な少子高齢化の進展、消費者の価値観の多様化等の社会経済情勢の変化によって、全国規模で展開される大型店等の郊外への立地と中心市街地や商店街の衰退が進み、地域の人々のふれあいや絆(きずな)が失われようとしている。さらに、北陸新幹線の開業により大都市との交流人口の拡大が見込まれる等、県内商工業を取り巻く環境は大きく変容しつつあり、数多くの商工業者によって作り上げられてきた地域のにぎわいと魅力が失われかねない状況にある。
 県民が郷土への誇りと愛着をはぐくみ、真の豊かさを実感しながら暮らしていくためには、県及び市町村の緊密な連携による支援の下、商工業者が経済活動や地域貢献活動を通じてにぎわいと魅力にあふれる地域を創造していくことが、必要不可欠である。本店を県外に有する商工業者を含め、すべての商工業者が、商工団体等に加入し、地域の自然、景観、歴史、伝統、文化、産業等の資源を最大限に活用することによって事業機会の増大を図るとともに、商工団体等は、商工業者の積極的な参加を得て、にぎわいと魅力にあふれる地域の創造に自ら率先して取り組むことが求められている。
 ここに、すべての商工業者及び商工団体等の積極的な取組及び協力の下に、にぎわいと魅力あるまちづくりを推進するため、この条例を制定する。

 商工業者の活動は、地域住民の生活と密接な関わりを有し、また、地域のまちづくりや地域のコミュニティに大きな影響を及ぼします。
 かつて、県内各地の商店街には、その地域に暮らす人々が大勢行き交い、まちのにぎわいと魅力が創出され、コミュニティが形成されてきました。
 しかし、近年では、全国規模で展開される大型店等の郊外への立地と中心市街地や商店街の衰退が進むとともに、にぎわいと魅力の創出に中心的な役割を果たしている商工会議所、商工会の会員数は年々減少しており、地域の人々のふれあいや絆(きずな)、地域のにぎわいと魅力が失われかねない状況にあります。
 そこで、この条例の制定をきっかけとし、商工業者及び商工団体等がまちづくりに積極的に取り組み、相互に協力する気運を醸成することで、「にぎわいと魅力あるまちづくり」を推進していきたいと考えています。

<参考> 県内の商工会議所、商工会の会員数の減少の状況(単位:人)

平成17年 平成21年 増減
商工会議所 17,633 16,768 △865( △4.9%)
商工会 14,294 12,452 △1,842(△12.9%)

2 目 的

この条例を制定する目的を定めます。

(目的)

第1条

この条例は、商工業者及び商工団体等がそれぞれの地域において行っている経済活動及び地域貢献活動が地域社会の発展に果たす役割の重要性にかんがみ、すべての商工業者及び商工団体等のにぎわいと魅力あるまちづくりを推進する活動への積極的な取組を促進し、相互に協力する気運を醸成することにより、豊かで活力に満ちた地域社会を実現し、もって県民生活の向上に寄与することを目的とする。

3 定 義

「にぎわいと魅力あるまちづくり」、「商工業者」、「商工団体等」の3つの用語について、この条例の中でどのような意味で用いられているのかを明らかにしています。

(定義)

第2条

この条例において「にぎわいと魅力あるまちづくり」とは、経済活動及び地域貢献活動を通じて地域社会を活性化し、地域の自然、景観、歴史、伝統、文化、産業等の魅力を増進させる取組をいう。

2 この条例において「商工業者」とは、商工会議所法(昭和28年法律第 143号)第15条に規定する商工会議所の会員たる資格を有する者及び商工会法(昭和35年法律第89号)第13条に規定する商工会の会員たる資格を有する者をいう。

3 この条例において「商工団体等」とは、次に掲げる団体をいう。
(1) 商工会議所
(2) 商工会
(3) 商店街振興組合等一定の地域において近接して小売商業、
  サービス業等を営む者によって構成される団体
(4) 前各号に掲げる団体のほか、専ら地域社会の福祉の増進を図るため、
  にぎわいと魅力あるまちづくりを推進する活動を行うことを
  目的とする団体であって主として商工業者により構成されるもの

「にぎわいと魅力あるまちづくり」には、経済活動を通じて行われるもののほか、地域貢献活動(例えば、まちづくりの取組への協力、地域経済活性化の推進、子ども・高齢者・障害者等への配慮、防犯・防災、環境対策、景観形成への協力、祭礼等の伝統行事への参加など)を通じて行われるものが含まれます。
「商工業者」とは、商工会議所、商工会の会員資格を有する者をいい、具体的には、商工会議所、商工会の地区内において引き続き6箇月以上営業所、事務所、工場又は事業場を有する商工業者がこれにあたります。
「商工団体等」には、商工会議所、商工会、商店街振興組合に加え、いわゆる商店会(商店街等一定の地域において近接して小売商業、サービス業等を営む者によって構成される団体)のほか、観光協会、青年会議所、NPO法人などであって第3項第4号に掲げる要件を満たすものが含まれます。

4 商工業者、商工団体等、県民及び県の取組等

商工業者、商工団体等、県民及び県が、適切な役割分担と相互の連携、協力の下に継続してにぎわいと魅力あるまちづくりに取り組んでいくため、各主体の取組等について定めています。

○商工業者の取組

第3条

商工業者は、にぎわいと魅力あるまちづくりに積極的に取り組むものとする。

2 商工業者は、商工団体等に加入すること等により、
  商工団体等が行うにぎわいと魅力あるまちづくりを推進する活動に
  積極的に参加するよう努めるものとする。

3 商工業者は、商工団体等がにぎわいと魅力あるまちづくりを
  推進する活動を行うときは、応分の寄与をすることにより、
  当該活動に協力するよう努めるものとする。

県民が郷土への誇りと愛着をはぐくみ、真の豊かさを実感しながら暮らしていくためには、商工業者の方々に、経済活動や地域貢献活動を通じて、にぎわいと魅力あるまちづくりに積極的に取り組んでいただくとともに、商工業者の方々が相互に協力しあって、にぎわいと魅力あるまちづくりを推進する活動を行うことが、大変重要であると考えます。
地域で事業を営むすべての商工業者の方々(県外から進出した大型店や全国チェーン店を含みます。)には、商工団体等への加入、商工団体等が地域のにぎわいを創出し、魅力を増進させるために行うイベントなどへの積極的な参加・協力が期待されます。

○商工団体等の役割

第4条

商工団体等は、市町村との連携を図りつつ、地域の実情を踏まえ、
にぎわいと魅力あるまちづくりに積極的に取り組むものとする。

2 商工団体等は、当該団体に加入している商工業者がにぎわいと
  魅力あるまちづくりを推進する活動を行うときは、当該活動に対し、
  必要な支援を行うよう努めるものとする。

商工団体等には、市町村との連携を図りながら、にぎわいと魅力にあふれる地域の創造に率先して取り組むことが求められます。
また、商工業者の積極的な参加を得られるよう、商工団体等の活動の充実を図る必要があると考えます。

○県民の協力

第5条

県民は、商工業者及び商工団体等がそれぞれの地域において行っている経済活動及び地域貢献活動が地域社会の発展に果たす役割の重要性を理解し、これらの者が行うにぎわいと魅力あるまちづくりに協力するよう努めるものとする。
地域社会を活性化し、地域の魅力を増進させるためには、商工業者や商工団体等による積極的な取組だけではなく、地域に暮らす人々の存在がやはり欠かせません。県民の理解と協力のもと、にぎわいと魅力あるまちづくりを商工業者、商工団体等と県民とが一体となって推進することが必要であると考えます。

○県の責務

第6条

県は、市町村と連携して、にぎわいと魅力あるまちづくりのために必要な施策を実施するとともに、商工業者及び商工団体等が行うにぎわいと魅力あるまちづくりを推進する活動に対し、必要な支援を行うものとする。

にぎわいと魅力あるまちづくりを推進する際の県の責務を明確にするため、

(1) 地域社会を活性化し、地域の自然、景観、歴史、伝統、文化、
  産業等の魅力を増進させる施策を実施すること、
(2) 商工業者及び商工団体等が行う活動に対して必要な支援を
  行うことを定めています。

具体的には、歴史と文化が薫るまちづくり、美しい景観づくり、水辺を活かしたにぎわいづくり、まちのにぎわいの拠点を創出する事業や地域の魅力を発信する取組への支援の拡充、店舗の魅力の向上、空き店舗の解消など中心市街地・商店街の活性化に対する総合的な支援、後継者等人材の育成・起業支援、商工団体等が行う地域貢献活動に対する支援、新たに立地する大型店等に対する商工団体等への加入の勧奨などが考えられます。